iPhoneの「使いやすさ」とは

現在は製造業にとって、機能的価値よりも意味的価値の創出が重要になっています。アップルやダイソンは、この意味的価値を創出することによって、高い商品競争力を維持しています。それに対して、多くの日本企業はいまだに機能的価値にとらわれているため、高業績に結びつかないのです。象徴的な例がスマートフォンです。iPhoneと競合商品を機能だけで比較した場合、iPhoneでなければできないことはほとんどありません。むしろ、以前は日本製の商品のほうが、防水やテレビ、非接触ICカードなどが搭載され高機能でした。それでも、他社製品より高価なiPhoneが売れるのは、ストレスなく気持ちいい使いやすさや、美しいデザインなどに、消費者が価格差以上の価値を感じているからです。こうした価値は、カタログで表される機能や仕様ではわかりません。日本でも、アップルやダイソンと同様に高い顧客価値を生み出しているのが自動車産業です。自動車はスペックだけでなく、デザインや品質感、操安性など顧客の主観的な好みが重要です。そのため、日本の自動車メーカーは早くから意味的価値の創出に取り組み、高い国際競争力を維持してきました。大切なのは、機能的価値と意味的価値を融合した、相乗効果としての価値づくりです。例えばiPhoneは、アルミを削り出したユニボディの美しいデザインだけが重要なわけではありません。商品コンセプトやユーザビリティ、機能などを含めた、統合的な価値として高く評価されています。このような、機能的価値と意味的価値を統合した価値づくりをいかに行うかが、日本の製造業が競争力を取り戻すためのカギと言えます。

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